遅刻のXmas
外はしんしんと雪が舞い落ちている。
小さな粒は、重なり合って地面を白く塗り潰していた。
「ソル…」
暗い部屋の中で、わずかにカイが身じろぎした。
元々家の周りは人気もなく静かだったが、今はさらに雪が降っているため、まるで世の中から音が消えてしまったかに思える。
「まだ寝ていないことは分かっているんだぞ」
そう言って、隣にいる男の顔をそっと覗き込む。
「あくまでも、寝たふりをするんだな」
こちらを向きもしないソルに、ため息を吐く。
「全く、急に来たかと思ったら、何なんだ、おまえは」
連絡もなく来るのはいつものことだが、きょとんとしているカイを見たとたん、明らかにソルの顔は不機嫌になった。
同じベッドにいるのに、何もない。
それがこんなに不安になるなど、カイには初めてのことだった。
「一体おまえは何を…」
そこまで言ったとき、カイの目にふと、カレンダーが映った。
「あ…」
そうか。
そういうことか。
「ソル」
カイはソルの背中に自分の顔を埋めた。
そして、ようやく得た答えを口にする。
「メリークリスマス」
もっとも、もう日付は変わっていたが。
ちょうど、26日になったばかりだ。
クリスマスに浮かれる町並みは見ていたはずだが、全然自分には関係ないと思っていた。
――――しかし、ソルは律儀にも覚えていて、わざわざ訪ねてくれた。
カイにはそれが嬉しかった。
「気を遣ってくれたのに、気が付かなくて悪かった」
込み上げる笑いを抑えながらそう言うと、
「ちっ…」
ソルは小さく舌打ちすると、身を反転させて、カイを思い切り抱き締めた。