New year




「ソル?」


 つい今し方、新しい年が明けた。
 一緒にその感慨を分かち合おうと隣を見たのだが。


「……」


 返事がない。


「寝てるのか…はあ」


 ややあきれ気味にため息を吐きつつも、カイの表情は柔らかかった。
 ぴったりとソルの隣に座る。


「こうして、一緒に年を越せたことだけで、充分だ」


 ポツリと。
 小さい声で囁いたつもりだったのに。


「!」


 隣からは無言で腕が伸びてきた。


「お前…! 狸寝入りを…」


 文句を言おうと開いた口は、いとも簡単に塞がれてしまう。


「…馬鹿」

「馬鹿はどっちだ」


 揶揄を含んだ、それでいていつもより穏やかなソルの声。
 それに、いとも簡単にほだされる自分もどうかと思いながら。


「…一緒にいてくれて、ありがとう」

「やっぱり、馬鹿はお前じゃねえか」


 本格的に身を乗り出したソル。
 それが何の抵抗もなく受け入れられたのは、年が改まったせいなのか。


 でもそれは。
 今のカイには、どうでも良いことだった。


 ――――新しい年、これから先もこうしていられるように。


 ソルの腕に抱かれながら、ぼんやりそんなことを願っていた。






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