誕生日プレゼント





「……ん?」
 何だか体が重い気がする。
 気のせいだろうか?
 カイはゆっくり目を開けた。
 目の前は暗い。
 まだ夜明けではないのだろう。
 だんだんと目が慣れてくると、見覚えのある天井が見えてきた。
 寝返りを打とうと体をねじろうとして…。
「あれ…?」
 できない。
 どういうことだろう。
 やっぱり重い。
 体の上に何か載っている気がする。
 カイは少しだけ身を起こした。
「えっ…」
 それは、まるで打ち上げられた鯨のように、カイの体の上に乗っかっている。
 何ちゃって鯨は、見知った顔だった。
「ソル…?」
 カイが寝ている間に、一体どこから入り込んできたのだろう。
 いつものことながら、びっくりさせられる。
 しかもわざわざ布団のなかに潜り込んでいるのだから。
「…気付かなかった私も私か」
 ソルがいつ入り込んできたのか気付かない自分にも、苦笑する。
「おい、ソル?」
 呼んでみるが、反応はなし。
 揺すっても叩いても、起きる気配はない。
「仕方がないな」
 カイは体をずらして、下敷きになっていた体をソルの隣に移した。
 俯せだった彼の顔が真正面にくる。
 相変わらずソルは眠ったままだ。
「…ああ」
 そういえば、今日は…。
 カレンダーで日付を確認して、やっぱりとうなずく。
 11月20日。
 カイの誕生日だった。
 日付が変わったばかりなので、まだ誕生日は始まったところだ。
 カイはソルが眠っているのを見ているうちに、ちょっとした悪戯心が浮かんだ。
 そっとソルの頬に触れてみる。
 白く細い指が日に焼けた肌を滑っても、ぴくりとも動かない。
 …よしよし、ちゃんと寝てるな。
 確かめ終わったカイは、小さな声でささやく。
「誕生日プレゼントは、おまえでいいよ、ソル」
 返事はない。
 だが、カイにはそれで十分だった。
「おやすみ」
 傍にいてくれるだけで。
 ただそれだけで、心の中が満たされていく。
 カイは布団を手繰りよせ、間近にソルを感じながら、静かに目を閉じた。






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